屋久島旅③ 暗闇と夜明け、島の頂上へ

2013年6月7日(金) 
夜中3時に目が覚める。
山小屋の中はまだ誰も起きていないようだ。 

目を開けて、目を閉じていたときと全く明るさが変わらないことにびっくりする。
自分の目が閉じてるのか開いているのか分からなくなる。
端の方とはいえ東京で育った私は、真夜中でも街灯や民家の窓から漏れる灯りのある景色に慣れている。 

これが本当の暗闇なんだ。 

ヘッドライトをつけて、フリースを着込み、小屋の外へ出る。
慎重に足元を照らしながら、空の開けているところへ向かう。 

一呼吸して、ヘッドライトを消す。 

吸い込まれそうな静けさと、畏怖すら感じるほどの暗闇に、自分がイマココに立っていることさえ不確かに感じられた。 

ゆっくりと空を見上げる。 

ぎっしりと、生まれてこの方見たこともないほど多くの星が、瞬いている。
あまりの光景に、体の底から叫びたいような気持ちが湧き上がる。
感動というより、衝動といったほうがいいような感覚。 

しばらくの間、星空に見とれていた。 

寒くなってきたので、小屋に戻る。
着替えて、荷物をまとめ、ガイドさんを起こす(ガイドさん寝坊・・・笑)
午前4時10分、暗いうちに小屋を出発。 

途中樹が倒れて、登山道がふさがれている場所があった。
朝からサバイバルな感じで、トラバースするはめに。 

東の空が白み始める。

追いかけっこのように歩みを進める。
5時5分、第二展望台、といわれる場所に到着。 
いくつもの稜線が重なる、その向こう側に水平線が見える。

グラデーション。

朝焼けの空。

陽が昇る。
景色が色彩をもつ。
鳥が鳴き始める。 

ほんの15分足らずの出来事だった。 
朝日に見とれている間に、ガイドさんが朝ごはんを作ってくれた。

卵の雑炊と、サバ節ののったサラダ。 

大きな1枚岩の上に座って、それを食べる。
2回もお代わりした。今日はここから屋久島の最高峰、宮之浦岳を目指す。 

出発してしばらく歩くと、高い樹が減ってくる。
森林限界が近づいてきている。
そして一気に視界が開ける。

目指す頂上がハッキリと見えた。テンション上がって思わず跳ねる。

朝もやの中、ヤクシカの親子。 

笹薮の中をぐんぐん登る。昨日の雨が草木について、朝日を受けてキラキラ光る。
頂上の少し手前、岩屋の隙間に祠がある。 

屋久島の山は、山岳信仰の対象だ。集落ごとに決まった山があり、それぞれ年に2回岳参りが行われる。
宮之浦岳は島の一番奥に位置し、一番高い山。
屋久島で一番なのはもちろん、九州で一番高いのも宮之浦岳なのだ。 

標高は2000mもないものの、海からいきなりそびえ立つような地形がゆえに高低差はかなり激しく(普通は山麓もそれなりに高い)、屋久島は「洋上のアルプス」とも言われるそうだ。 

最後は結構な急登だが、昨日とは打って変わっての青空と太陽、
10年に一度の当たり年といわれた石楠花に見とれながら歩いたからか、あまりきつくは感じなかった。

石楠花の花、つぼみは濃いピンクで、開くにつれ白い花になる。

そして、てっぺん!!!
360度の大パノラマ。前岳といわれる集落に近い山々の向こうには海岸線、そしてお隣の種子島も見えた。 

気持ちのいい風が吹き抜ける。
歩いてきた道がずっと見通せる。
あんなに遠くから歩けたんだ、と他人事のように感じたりもする。 

島のてっぺんで。
この日のこの景色を、ずっと覚えておきたい、と思った。